死んだサキと一樹をずっと忘れられないでいた。

 だがそれは、悠大が忘れてはいけないと決めつけていた事だった。

 亡くなった人がその先で、どうなるかなんて考えもしなかった。

 自分が苦しむように、亡くなった人も苦しんでいるなんて考えもしなかったのだ。



「ごめんな、一樹。私は、ずっと自分を責めていた。お前とサキを助けられなかったと。だから、誰とも再婚なんてしてはいけないと思い込んでいたんだ」

「そんな事ないよ。・・・だって・・・残された人が幸せになる事が、死んだ人の喜びなんだから・・・」

「そうだな・・・」

「姉ちゃんなら、俺も母さんも認めるから。父さんだって、本当は姉ちゃんの事が好きなんでしょう? 」


 悠大はドキッとして赤くなった。


「分かるよ。姉ちゃん、とっても魅力的だし。きっと、母さんと同じ天使の血を引いているんだと思うよ」

「え? そうなのか? 」

「姉ちゃんの瞳。紫色なの知っている? 」

「あ・・・いや・・・。ちゃんと、見たことがまだなくて・・・」

「ふーん。照れて見れないんじゃないの? 」

「い、いや・・・そう・・・なのかもしれない・・・」


 悠大は照れくさそうに頭をかいた。


「ねぇ、本当の気持ち教えてよ。ちゃんと、父さんの口から聞きたいから」

 悠大はちょっと恥ずかしそうな目をした。

「本当は・・・結婚式の時、初めて彼女を見た時から胸がキュンとしていた。13年ぶりだから、良く分らなかったんだ。ずっと、人を好きになってはダメだ! 再婚してはダメだ! と、思い込んでい生きて来たからな。周りがうるさいから、適当に若い人と結婚すればいいと思って選んだが・・・。隣に並んでくれたら、正直嬉しくなった。本当は、作ってくれるご飯も嬉しい気持ちがいっぱいだったが。それはダメだと思い込んでいたから、ずっと避けていたんだ。だが、お前が来てきてから、ずっともやもやしていた。楽しそうな話し声が聞こえるたびに、ちょっとヤキモキしていたよ」


 和也はフッと笑った。


「やっぱりそうだったんだ。わざとやってたんだぜ、どうせヤキモキしているに違いないって思ってたからさっ」

「見抜かれていたのか、恥ずかしいなぁ」

「当り前じゃん。俺は、父さんの子だよ。なんとなく、分かるんだ。心が繋がっているから」

「そうか。・・・来てくれて、ありがとうな」

「別に、それだけで来たんじゃねぇし。とりあえず、このお金の事。まだ姉ちゃんに、問い詰めないでくれ。俺がバラしたこと知ったら、姉ちゃんいなくなっちゃうぜ。それより、父さんがちゃんと姉ちゃんと向き合う事が大切じゃん。これからも、姉ちゃんと一緒にいるんだろう? 」

「ああ、そうだな」

「姉ちゃんの事、ちゃんと幸せにしてやれよ! 泣かしたら、化けて出てやるからな」


 ツンと悠大の胸をついて、和也は悪戯っぽく笑った。