「・・・マスクだけしか買っていないようだな」

「ああ、そうだ。姉ちゃんずっと、マスクつけっぱなし。寝ているときもだよ」

「え? 」


 和也はちょっと怒った目をして悠大を見た。


「あんた、仮にも姉ちゃんの夫だろう? 」

「そうだが・・・」

「だったらさ、もっと姉ちゃんの事を見てやれよ! いくら帰りが遅くて、姉ちゃんが先に寝てたとしても寝顔くらい見てやれよ! 」


 和也の目が潤んだのを見て、悠大はハッとなった。

「・・・姉ちゃん・・・顔に怪我している」

「はぁ? 本当か? 」


 ガシッ! と、和也は悠大の襟首をつかんだ。


「お前さ、どこまで冷たい態度してんの? どんだけ姉ちゃんが1人で傷ついて、我慢してるのか判るか? 」

「ちょ、ちょっと待て。落ちきなさい! 」

「いい加減にしろよ! お前、いつまで傷ついてりゃ気がすむんだ? 13年もたってんのに、お前がいつまでもウジウジしてっから、母さんだっていつまでも成仏できねぇじゃねぇかよ! 俺だって、せっかく生まれ変わっても、全然幸せになれねぇんだよ! 」


「ちょ、ちょと待ちなさい! なにを言っているんだ? 」


 悠大は驚き真っ青になった。


「うるせぇ! ・・・いいか? 死んだ人間は、この世に未練なんて残してねぇんだよ! 自分が決めた人生を、まっとうしてこの世を去っただけだ! それがどんな形であろうとな! だから・・・だから・・・いつまでも、泣いてんじゃねぇよ・・・」


 感情が溢れてしまい、悠大を突き放し和也は泣き出してしまった。


 そんな和也を悠大はそっと抱きしめた。


「ごめん・・・」

 ギュッと和也を抱きしめて、悠大はそっと頭を撫でた。


「そうか、今やっと分かったよ。お前を見た時から、何となくサキと重なっていた。初めて私に怒鳴りつけてきた態度も、あの挑発的な行動も。・・・お前は、一樹なんだな? 」


 泣いている和也はそっと頷いた。

「ごめん・・・」

 ギュッと和也を抱きしめて、悠大はそっと頭を撫でた。


「そうか、今やっと分かったよ。お前を見た時から、何となくサキと重なっていた。初めて私に怒鳴りつけてきた態度も、あの挑発的な行動も。・・・お前は、一樹なんだな? 」


 泣いている和也はそっと頷いた。