「泣き虫なのも、似ているかもね」

「え? それは、母さんでしょう? 俺と一緒に、良く泣いてたじゃん。俺が夜泣きして寝ない時となんて、一緒に泣てくれてたじゃん」

「え? そんな事を覚えているの? 」

「うん。赤ちゃんだったけど、覚えているよ」

「そう。なんだか嬉しいわ」


 ギュッと和也を抱きしめるサキ。


「あ、大切な事を忘れるところだったわ」

「え? 」


 サキは体を離して、和也を見つめた。


「あの彼女。嶺亜さん? 」

「うん」

「あの子にお姉さんが居るでしょう? 」

「うーん、確か1人いたと思う」

「そのお姉さんが、どうやら彼女につきまとっているようなの」

「え? 」

「ねぇ、後から食器棚の引き出しに入っているお財布見てくれる? きっと中身が空っぽになっていると思うの」

「うん」

「貴方が帰って来る前だったわ。彼女のお姉さんが来ていたの。それでね、彼女にものすごい勢いで怒鳴っていて。最後には財布からお金を抜き抜いて持っていたの」

「え? それじゃまるで恐喝じゃん」

「そうだけど。初めは彼女も断っていたのだけど、すごい勢いで殴られてたわ」

「殴られた? 」

「ええ、すごく頬が腫れていたし、地面に血が滴り落ちていたわ。結構酷いと思うのだけど、何も聞いていない? 」

「いや、何も・・・」

「とりあえず気を付けて、彼女のお姉さん。私達を引き殺した車の助手席に、乗っていた人に似ているから」

「分かった・・・」


 サキはスーッと消えた。



 和也は2階を見た。


「そう言えば、今日は帰ってからずっとマスク着けたままだったよなぁ・・・」


 和也はそのまま部屋を出て、2階へ向かった。