和也はチラッと悠大を見た。
「どうぞ、このくらいの量でよかったですか? ご飯」
嶺亜が茶碗を傍に置いて尋ねると、ちょっと恥ずかしそうに悠大は頷いた。
悠大はおかずを見て、どれから食べようか迷ってしまった。
沢山おかずがあり、どれも美味しそうに見える。
悠大が迷っていると、和也がお皿に唐揚げと魚のフライを取ってくれた。
「これ、すげぇうめぇから。食ってみろよ、店で買うよりずっとうめぇから」
ちょっと複雑そうな顔をして、悠大は食べ始めた。
唐揚げを一口食べて
「あ…美味しい…」
いつも店の出来合いの物ばかりたべている悠大は、手作りの唐揚げは久しぶりでとても新鮮だった。
魚のフライも、大根の煮物も、野菜サラダも。
どれもがとても美味しくて。
食材だけじゃなく。
きっと…
誰かと一緒に食べる事が嬉しいのだと、悠大は気づいた。
そんな悠大をチラッとみている和也。
食事が終わると、嶺亜がなしをむいてくれた。
甘くてとてもおいしくて、愛想がなかった悠大の表情がゆるんだ。
洗い物をしている嶺亜を悠大はじっと見た。
サキと重ねるわけではないが、嶺亜の後ろ姿を見ていると安心感が湧いてくるのを感じた。
ソファーに座ってテレビを見ながら、和也は悠大の様子を見ていた。
「ふーん、ちょっとは気にしているんじゃねぇかよ。…もっと素直になれよ…」
ボソッと和也が呟いた。
この日をきっかけに、悠大は家でご飯を食べる回数が増えてきた。
遅くなるとついつい買ってきてしまうが、それでも嶺亜は悠大の分まで作ってくれている。
次の朝まで残っていると和也が「もったいない」と言って食べていた。