「そ、それはダメだ! 絶対にダメだ! 」

「なんで? だって、愛していないんでしょう? 別にいいじゃない、他の男に渡しても。彼女まだ若いしね」

「ダメだと言っている! 」

「なんでよ! あんたが相手しないんじゃ、いつか他の男のところに行っても、文句言えないよ! 」


 そう言われると、悠大は黙ってしまった。


 サキはやれやれと、ため息をついた。



「あんたさぁ、私に良く言ってたよね? 自分に正直になれって」

「ああ、そうだが」


「あんたが今苦しいのは、自分の本当の気持ちに嘘ついているからよ」

「自分に嘘? 」

「そう、早く気づかないと大変な事になるよ。ライバルもいるわけだしね」


 カチャッ。


「はぁ~随分買ったなぁ」

 和也と嶺亜が帰ってきた。


 サキはサッと消えた。

「あ…」


 悠大が驚いていると。


「ん? なんだ、あんたいのかよ」


 和也が嶺亜と一緒にリビングにくると。

 悠大は2人が一緒に姿を見て、何故かもやっとした。


(自分に嘘つくな…)

 サキが言った言葉が頭によぎった。

 和也と嶺亜は買ってきた食材を冷蔵庫に入れた。


「あ、これは今日の夜に使うから。このまま出しておくから」

「有難うございます。じゃあ、私はトイレットペーパー置いてきます」


 嶺亜はそのままトイレに向かった。



 悠大は和也をじっと見た。


「ん? なに? 」

 見られている事に気付いて、和也は悠大を見た。


「あ、いや・・・。随分買い込んできたんだな」

「うん。1週間分買い込まないと、仕事があるからって嶺亜さんが言うから。そんでもって、俺の必用品も買ってもらったし」

 と言いながら、和也は買った新しい下着を見せた。


「お、お前。そんなものまで買ったのか? 」

「ん? だって、これって必要品じゃん。俺のパンツ、結構古くなってたし。シャツも古くなってたからさぁ。嶺亜さんが選んでくれて、センスいいの買えたぜっ」


 嬉しそうな和也を見て、悠大はまたモヤっとなった。