「なに? もうお昼過ぎているのに、まだ目が覚めない? ずっと部屋にこもって、パソコンばかりやっているから? 」
悠大はじっと目の前の女性を見つめた。
「お前…誰なんだ? 」
「え? 嫌だぁ。もう忘れたの? 私の事」
「まさか…サキなのか? 」
「そう、覚えてくれていたのね? 良かった」
信じられない顔をしている悠大に、悪戯っぽく笑うサキ。
「何驚いているの? あんたが、いつまでも離してくれないから。私、成仏できないままなんだけど」
「何を言っているんだ? もう、13年もたっているんだぞ」
「そう、13年もたっているの。それなのに、いつまでもあんたは前を見ない。確かに愛する人が居なくなれば、悲しいわよ。悲しみが簡単に癒されない事も、知っているわ。でも長すぎでしょう? あんたが離してくれないから、不幽霊みたいにここに引き止められているの。分かる? 」
「私が、お前を引き止めていると言うのか? 」
「そうよ、どんな形で死んでも。それは、私が決めて来た事。もう、人生を全うしているの。13年も引き止められているんじゃ、次の人生楽しめないじゃない? だから、もういい加減に離してほしいから。こうして、あんたの前に出て来たの」
サキはふーッと一息ついた。
「ちょっと待て、私には意味が解らない。死んでいる人間が、現れるなんて…幽霊も見たことがないのに…」
「普通の人間なら、ありえないわよ。でもね、私、天使の家系なの」
「天使? 」
「そう、遥大昔に天使って実在していて。人間と仲良く暮らしていたようよ。でもね、人間は欲が深くなり天使は、そんな人間に嫌気がさして羽を使ってずーっと上の世界に天使だけの世界を作ったの。全ての天使は、そこに移住してしまい地上には人間しか残らなかった。…筈だったんだけど…。天使の中には、人間に恋しちゃった天使もいて。そのまま地上に残った天使もいるの。人間と天使のハーフもいれば、純潔な天使の一族もいて。今ではだいぶん薄くなっているけど。こうして死んでから、姿を現すことができるの」
まるで、おとぎ話しを聞いているようで。
悠大は驚きすぎてポカンとなった。