お昼を過ぎた頃。


 嶺亜は買い物に出かける為、準備をしていた。


「嶺亜さん、どっか行くの? 」

 和也がやって来た。

「ちょっと買い物にいこうと思って。食材買っておかなくちゃいけないし」

「へぇー。じゃあ、おれも一緒に行っていいい? 」

「え? 」

「俺も色々買いたいのあるんだ。でも、まだ給料もらってねぇし。ちょっと頼んでもいいか? 」

「そう、分かったわ」



 
 買い物に出かける時。

「ちょっと待ててくれ」


 和也は2階の悠大の部屋に向かった。





 悠大の部屋のドアをノックした。

「はい」

 ちょっと低めの声で返事があり、和也がドアを開けると。


 悠大はパソコンに向かって仕事をしていた。



「おーい、俺、嶺亜さんと買い物行ってくるけど。あんた行かないのか? 」

「仕事がある、行きたいなら勝手に行ってこればいい」

「ふーん。欲しい物ないのか? 」

「ない・・・」

「あっそ。じゃあ、俺行ってくるわ。嶺亜さんと・・・デートに! 」


 デート?

 仕事の手を止めて、悠大は振り向いた。


 和也はもういなかった。

 
「お待たせ、じゃあ行こうか」


 待っていた嶺亜と和也は、そのまま買い物に行ってしまった。




 残された悠大はまた、モヤっとした気持ちが込みあがってきた。


 机の上の写真縦を手に取る悠大。


「・・・サキ・・・一樹・・・」


 見つめている悠大だが、何故か以前のような気持が沸き上がって来ない事に気付いた。


(なにしてるの? もう、ここにはいないよ)


 不意に悠大の耳に声が聞こえた。


 ハッとして振り向くが誰もいない。


「気のせいか? 」


 もう一度写真を見てみる悠大。


 写真で笑っているサキと一樹。

 だが何となく、その笑いが作り笑いに見えてきて・・・。


 目頭を押さえた。


「疲れているのだろうか? 」


 深呼吸をして、悠大はベッドに寝転んだ。



 天井を眺めると、サキと一樹が亡くなった事故の時を思い出した。