和也は余裕の笑みを浮かべて悠大を見ている。


「何怒ってんの? 」

「怒ってなどいない! 」

「怒ってるじゃん、目が」


 悠大はそっと目を反らした。

 
 そんな悠大を見て、和也はフッとため息をついた。


「あんたって、いつまで自分に嘘ついているんだ? 」

「なに? 」


「あんた、なんで姉ちゃんと結婚したんだ? 」

「そ、そんな事。お前に関係ないだろう」

「気になるからさ。俺、本気で姉ちゃんの事好きになっちまったし」

「はぁ? 」

「だって、あんなに美味しいご飯作てくれるし。お風呂だって用意してくれて、洗濯だってしてくれる。とっても優しいし、寝顔も可愛いし。言う事ないじゃねぇかよ」

「そ、そうだが・・・」

「それに、姉ちゃん。あんたが自分が作ったご飯食べずに、コンビニ弁当食べてたって何も言わないし怒る事もしないじゃん。俺だったら、ぶん殴ってたよ。せっかく作ったご飯を食べないなんて、普通の夫婦じゃありえねぇし」


 悠大は何も言えなくなり黙ってしまった。


「俺が食べたらすげぇ喜んでたぜ。あんたがコンビニ弁当買ってきたの、見てたようだし。結構傷ついてる顔してたぜ。このまま続いたら、あんた絶対捨てられる」

 
 捨てられる? 私が? 


 和也の言葉に、悠大は焦りが湧いてきた。



「捨てられる前に、俺が奪っちまうよ。これじゃ、姉ちゃん可哀そうだし」

「そ、そんな事。・・・させない・・・」


 戸惑いの表情を浮かべて、悠大が言った。


「あんたに、そんな事言う権利なんてないと思う。まっ、好きにしなよ。俺は本気だから」


 それだけ言うと、和也は去って行った。


 悠大は複雑な気持ちが込みあがってきた。