真っ白な部屋だった。
壁も天井も照明も窓を包むレースも、白に統一され神聖な雰囲気を作り出していた。
レースの隙間から差し込む太陽の光と、収納置の上に置かれた花瓶と白い花が室内の圧迫感を緩和し開放的な気分にさせてくれた。
僕は壁に建て掛けられたパイプ椅子をベッドの隣に組み立て、そこに腰掛ける。
彼女はずっとここにいた。
自分の死を意識せざるを得ない程の病に侵され、終わりの瞬間までただじっとここで待ち続けていたのだ。
それが数年なのか、数か月なのか、数日なのか、余命宣告を満たすその日まで、あらゆる情報から隔離された静かな部屋で、病室という名の監獄に、彼女は閉じ込められていたのだ。
人が生きる人生の果ては、こんなに寂しい結末を迎えてしまうのか。
僕の知っているユリナは外の世界でこの身が尽きるまで笑顔で走り続けているような少女だ。
でも、この部屋にいたユリナはどこにもいけない。
走るどころか、歩くことすらままならなかったのかもしれない。
ユリナの心は、とっくに壊れていたに違いない。
ベッドの傍に置かれた車椅子を見て、僕はそう想像する。
視線をベッドに移した時、枕の下にノートの端が挟まっているのを見つけた。
手に取ってみるとそれはA4サイズの大学ノートだった。
ノートの表紙を一枚開けると、彼女の丸っこくて小さな字が見えた。
日付と天気、それから三行程使い簡単にその日の出来事をまとめていた。
〈六月八日 晴 この部屋に入って二か月位経つかな?毎日退屈で、テレビを見ても本を読んでも、あらゆる媒体は私の心を満たしてくれない。
だからって何もしなかったら頭がボーとしておかしくなりそうになる。
だから頭の体操の一環で日記をつけることにした。
味気がないくらい簡単に書くし、今の病院生活を書き留めておきたい事なんて正直一つもないけど、なにもしないよりはマシだと思ったから。
でも今日はもう眠たいから、明日から真面目に書いていくね〉
日記はそんな始まり方だった。
マイペースで彼女らしい文章は日記を通して彼女が直接語り掛けてくるようだった。
壁も天井も照明も窓を包むレースも、白に統一され神聖な雰囲気を作り出していた。
レースの隙間から差し込む太陽の光と、収納置の上に置かれた花瓶と白い花が室内の圧迫感を緩和し開放的な気分にさせてくれた。
僕は壁に建て掛けられたパイプ椅子をベッドの隣に組み立て、そこに腰掛ける。
彼女はずっとここにいた。
自分の死を意識せざるを得ない程の病に侵され、終わりの瞬間までただじっとここで待ち続けていたのだ。
それが数年なのか、数か月なのか、数日なのか、余命宣告を満たすその日まで、あらゆる情報から隔離された静かな部屋で、病室という名の監獄に、彼女は閉じ込められていたのだ。
人が生きる人生の果ては、こんなに寂しい結末を迎えてしまうのか。
僕の知っているユリナは外の世界でこの身が尽きるまで笑顔で走り続けているような少女だ。
でも、この部屋にいたユリナはどこにもいけない。
走るどころか、歩くことすらままならなかったのかもしれない。
ユリナの心は、とっくに壊れていたに違いない。
ベッドの傍に置かれた車椅子を見て、僕はそう想像する。
視線をベッドに移した時、枕の下にノートの端が挟まっているのを見つけた。
手に取ってみるとそれはA4サイズの大学ノートだった。
ノートの表紙を一枚開けると、彼女の丸っこくて小さな字が見えた。
日付と天気、それから三行程使い簡単にその日の出来事をまとめていた。
〈六月八日 晴 この部屋に入って二か月位経つかな?毎日退屈で、テレビを見ても本を読んでも、あらゆる媒体は私の心を満たしてくれない。
だからって何もしなかったら頭がボーとしておかしくなりそうになる。
だから頭の体操の一環で日記をつけることにした。
味気がないくらい簡単に書くし、今の病院生活を書き留めておきたい事なんて正直一つもないけど、なにもしないよりはマシだと思ったから。
でも今日はもう眠たいから、明日から真面目に書いていくね〉
日記はそんな始まり方だった。
マイペースで彼女らしい文章は日記を通して彼女が直接語り掛けてくるようだった。