【相坂リンの告白⑮】
ようやく……
トイレに立ったクリスさんとジェロームさんが個室『宝剣の間』へ戻って来た。
少し長かったから、何か相談事をしていたのかもしれない。
でも、良かった!
シスターステファニーとは恋の火花を散らしていたから、結構辛かった。
そのシスターステファニーは、やはり熱い眼差しをクリスさん、
否、トオルさんへ送っていた。
確信した。
シスターステファニーは本気だ。
こうなるとトオルさんを巡っての戦いは、避けられそうもない。
でも、私は絶対に負けない!
「ただいま、戻りました!」
「おう! 戻ったよ!」
王都騎士隊の隊長、副長のふたりは、大きな声で帰還宣言をして、元の席に座った。
ちなみにアランさんは一足先に戻って、
早速シスタージョルジエットと話し込んでいる。
辺りをはばかるようなひそひそ話なので、良く分からないが……
どうやら真剣なやりとりを行っている。
喧嘩ではないのが、幸いだが……
でも人より自分の恋。
よっし、ここは先制攻撃。
シスターステファニーに勝つ為に、ことわざ通り先んじよう。
「お帰りなさい~! 待ってたわ」
「ただいまっ」
「挨拶は元気良く!」が、看護師である私のモットー。
あ~んど、爽やかな、笑顔を合わせるのが基本。
お互いに気持ち良いから。
うん、トオルさんも分かっていて、素敵な笑顔で返してくれた。
でも、トオルさんは私に挨拶した後、きょろきょろしてる。
あれ、シスターシュザンヌを見てるぞ。
どうして?
と、不思議に思った私は、はたと気付いた。
トオルさんはいつもの癖が出たのだと。
『愛の伝道師』としての、気配り癖が。
案の定、哀しそうな表情をしてる。
先ほどジェロームさんから冷たくされたシスターシュザンヌを、
何とかケアしてあげたいと考えているに違いない。
相変わらず優しいなぁ……
ついトオルさんの仕草を観察してしまう私。
次にトオルさんは、アランさん、そしてシスタージョルジエットを見た。
先ほども言った通り、
幹事同士、ずっと『ふたりきりの世界』に入っている。
私が最後にトオルさんが見たのは……
恋敵で、いやいやリュカさんの相手をしている、シスターステファニーだ。
必死にシスターステファニーを口説くリュカさんだが
疲れと焦りの色が見えている。
改めて見やれば、一番『危険人物』だったシスタージョルジエットだけが幸せになっている。
古いベタなギャグだけど、な~んでこうなるの!?
シスタージョルジエット以外の参加メンバーは、私も含め、
いろいろ『難あり』となっている。
その上、そろそろ男子チームの席が変わる頃だ。
トオルさんが移動して、シスタージョルジエットの対面に座ってしまう。
更にその次は……
シスターステファニーの対面に座ってしまう。
と、その時。
トオルさんが一声。
私の勘は良く当たる。
「ええと……そろそろ席替えを……」
どかんっ!
ミシッ!
「わっ!」
「ああっ!」
「きゃっ!」
シスター達の悲鳴があがった。
私だって驚いた。
わあああっ!
誰かが、床を思い切り踏んだよっ。
音がした方を「そうっ」と見れば……
アランさんの傍の床がクラッシュしていた。
結構大きなひび割れが入っている。
改めて思った。
騎士さんって、凄いパワーだって。
でもアランさん本人は一見冷静で、微動だにしていなかった。
視線さえ動かさず、
シスタージョルジェットをずっと見つめている。
ちょっと怖いかも……
ふとトオルさんを見やれば、
アランさんの行為に納得したみたいで頷いていた。
何か、ピンと来たみたい。
でも、少し経ってから、アランさんより指示があった。
「あと10分、席を現状のままで」と、延長申し入れがあったのだ。
これって、凄く分かり易い。
つまり、あと10分あれば……
「シスタージョルジェットと、深い仲になれる」という意味だろう。
軽くため息をついた私は、改めてトオルさんを見た。
……トオルさんは、何やらジェロームさんと話していた。
そして、トオルさんが口を開いた。
場の空気を和らげる為、わざと3枚目を演じているようだ。
「シュザンヌさん! フルールさん! お菓子は好き?」
「大好き!」
「超好き!」
わぁ、トオルさんが素敵な話題を切り出した。
女性で、お菓子が嫌いな人を私は見た事がない。
美味しそうなお菓子を想像して、私は思わず笑顔となる。
シスターシュザンヌも、満面の笑みで応えてくれた。
会話が少しずつ、盛り上がって来た。
ここは、『特別なフォロー』のタイミングなのだろう。
トオルさんが、私ではなくシスターシュザンヌへ話しかけたから。
「シュザンヌさんは、お菓子とか、ご自分で作ったりするのですか?」
「ええっと、私は、あまり……」
トオルさんの質問を聞き、シスターシュザンヌはトーンダウンしてしまう。
私は知らなかったけど、
彼女はあまり、料理やお菓子つくりが得意ではないらしい。
シスターシュザンヌの反応を見た上で、
トオルさんがジェロームさんへ、何か囁いている。
すると、
ジェロームさんは「承知した」という雰囲気で、柔らかな笑みを浮かべ、頷いた。
そして、シスターシュザンヌへ、身振り手振り付きで話しかけたのである。
ようやく……
トイレに立ったクリスさんとジェロームさんが個室『宝剣の間』へ戻って来た。
少し長かったから、何か相談事をしていたのかもしれない。
でも、良かった!
シスターステファニーとは恋の火花を散らしていたから、結構辛かった。
そのシスターステファニーは、やはり熱い眼差しをクリスさん、
否、トオルさんへ送っていた。
確信した。
シスターステファニーは本気だ。
こうなるとトオルさんを巡っての戦いは、避けられそうもない。
でも、私は絶対に負けない!
「ただいま、戻りました!」
「おう! 戻ったよ!」
王都騎士隊の隊長、副長のふたりは、大きな声で帰還宣言をして、元の席に座った。
ちなみにアランさんは一足先に戻って、
早速シスタージョルジエットと話し込んでいる。
辺りをはばかるようなひそひそ話なので、良く分からないが……
どうやら真剣なやりとりを行っている。
喧嘩ではないのが、幸いだが……
でも人より自分の恋。
よっし、ここは先制攻撃。
シスターステファニーに勝つ為に、ことわざ通り先んじよう。
「お帰りなさい~! 待ってたわ」
「ただいまっ」
「挨拶は元気良く!」が、看護師である私のモットー。
あ~んど、爽やかな、笑顔を合わせるのが基本。
お互いに気持ち良いから。
うん、トオルさんも分かっていて、素敵な笑顔で返してくれた。
でも、トオルさんは私に挨拶した後、きょろきょろしてる。
あれ、シスターシュザンヌを見てるぞ。
どうして?
と、不思議に思った私は、はたと気付いた。
トオルさんはいつもの癖が出たのだと。
『愛の伝道師』としての、気配り癖が。
案の定、哀しそうな表情をしてる。
先ほどジェロームさんから冷たくされたシスターシュザンヌを、
何とかケアしてあげたいと考えているに違いない。
相変わらず優しいなぁ……
ついトオルさんの仕草を観察してしまう私。
次にトオルさんは、アランさん、そしてシスタージョルジエットを見た。
先ほども言った通り、
幹事同士、ずっと『ふたりきりの世界』に入っている。
私が最後にトオルさんが見たのは……
恋敵で、いやいやリュカさんの相手をしている、シスターステファニーだ。
必死にシスターステファニーを口説くリュカさんだが
疲れと焦りの色が見えている。
改めて見やれば、一番『危険人物』だったシスタージョルジエットだけが幸せになっている。
古いベタなギャグだけど、な~んでこうなるの!?
シスタージョルジエット以外の参加メンバーは、私も含め、
いろいろ『難あり』となっている。
その上、そろそろ男子チームの席が変わる頃だ。
トオルさんが移動して、シスタージョルジエットの対面に座ってしまう。
更にその次は……
シスターステファニーの対面に座ってしまう。
と、その時。
トオルさんが一声。
私の勘は良く当たる。
「ええと……そろそろ席替えを……」
どかんっ!
ミシッ!
「わっ!」
「ああっ!」
「きゃっ!」
シスター達の悲鳴があがった。
私だって驚いた。
わあああっ!
誰かが、床を思い切り踏んだよっ。
音がした方を「そうっ」と見れば……
アランさんの傍の床がクラッシュしていた。
結構大きなひび割れが入っている。
改めて思った。
騎士さんって、凄いパワーだって。
でもアランさん本人は一見冷静で、微動だにしていなかった。
視線さえ動かさず、
シスタージョルジェットをずっと見つめている。
ちょっと怖いかも……
ふとトオルさんを見やれば、
アランさんの行為に納得したみたいで頷いていた。
何か、ピンと来たみたい。
でも、少し経ってから、アランさんより指示があった。
「あと10分、席を現状のままで」と、延長申し入れがあったのだ。
これって、凄く分かり易い。
つまり、あと10分あれば……
「シスタージョルジェットと、深い仲になれる」という意味だろう。
軽くため息をついた私は、改めてトオルさんを見た。
……トオルさんは、何やらジェロームさんと話していた。
そして、トオルさんが口を開いた。
場の空気を和らげる為、わざと3枚目を演じているようだ。
「シュザンヌさん! フルールさん! お菓子は好き?」
「大好き!」
「超好き!」
わぁ、トオルさんが素敵な話題を切り出した。
女性で、お菓子が嫌いな人を私は見た事がない。
美味しそうなお菓子を想像して、私は思わず笑顔となる。
シスターシュザンヌも、満面の笑みで応えてくれた。
会話が少しずつ、盛り上がって来た。
ここは、『特別なフォロー』のタイミングなのだろう。
トオルさんが、私ではなくシスターシュザンヌへ話しかけたから。
「シュザンヌさんは、お菓子とか、ご自分で作ったりするのですか?」
「ええっと、私は、あまり……」
トオルさんの質問を聞き、シスターシュザンヌはトーンダウンしてしまう。
私は知らなかったけど、
彼女はあまり、料理やお菓子つくりが得意ではないらしい。
シスターシュザンヌの反応を見た上で、
トオルさんがジェロームさんへ、何か囁いている。
すると、
ジェロームさんは「承知した」という雰囲気で、柔らかな笑みを浮かべ、頷いた。
そして、シスターシュザンヌへ、身振り手振り付きで話しかけたのである。