「この中に入ってるやつ、実はクリスタルカットのガラスだけじゃなくてさ。他にもルビー、サファイア、エメラルドとか色々入ってるんだけど」
どう? と、天使のような笑顔で尋ねてくる蒼井くん。私は戸惑いつつも答えを返すべく、彼の手のひらの上で光る宝石たちを見つめた。
正直なところ、欲しくないと言えば嘘になる。眺めているだけで十分だなんて思っていた私でさえつい手にとってしまいたくなる、それくらい魅惑的な輝きをその宝石たちは持っていた。
「うーん……すっごく素敵だし確かに欲しいけど、いらない、かな……」
目の前で誘うようにきらきらと光を放つ宝石たちから目を引きはがし、私は答えた。
「欲しいけどいらない? 矛盾してるね。どうして?」
蒼井くんが肩をすくめながら私に質問返しをする。
「『人からプレゼントとかとして貰うなら』ってさっき言ってたけど、私はそれに見合うようなモノ、返せないもん。貰ったら貰いっぱなしって気持ち悪いし、ちょっと重いかも」
ガラス細工や宝石たちは本当に見事で、時間が許すならばずっとここにいて眺めていたい、それくらい魅力的だけれど。
プレゼントとして貰うにしても、それを受け取るに値する何かを私ができるわけではなく、しかもそれをくれた人に何かを返せるとも思えない。貰っても申し訳なくなりそうだ。
「なるほどね」
蒼井くんは考え込みながら、彼の足元にちょこんと座っているティレニアの方を見ている。黒猫もじっと蒼井くんを見つめ――ややあってティレニアがひと声、「にゃあ」と鳴くと、蒼井くんがまたこちらに視線を戻した。
「うん、よし」
「ん?」
謎にうんうん頷くクラスメイトに、私は聞き返す。何が『よし』?
「桐生さん、ここでバイトやらない? ちょうど探してただろ」
「……んん?」
唐突な展開に、私は思わず首をひねった。
「私、バイト探してるなんて話したっけ?」
そう、私は彼と面と向かって話したことがない。
「休み時間によくバイト情報誌見てるだろ。部活も入ってないみたいだし、すぐ帰るし」
私は目を見開いた。そんな私を見て、蒼井くんが朗らかに笑った。
「その反応、当たりみたいだね」
「お、おっしゃる通りで……」
ちょっとびっくりした。今のところスーパーのレジ打ちのアルバイトに入っているけれど、何かもっと条件がいいところがあるなら儲けものだと思って、確かにサイトやらフリーペーパーやらを片っ端から見ているところだったから。
どう? と、天使のような笑顔で尋ねてくる蒼井くん。私は戸惑いつつも答えを返すべく、彼の手のひらの上で光る宝石たちを見つめた。
正直なところ、欲しくないと言えば嘘になる。眺めているだけで十分だなんて思っていた私でさえつい手にとってしまいたくなる、それくらい魅惑的な輝きをその宝石たちは持っていた。
「うーん……すっごく素敵だし確かに欲しいけど、いらない、かな……」
目の前で誘うようにきらきらと光を放つ宝石たちから目を引きはがし、私は答えた。
「欲しいけどいらない? 矛盾してるね。どうして?」
蒼井くんが肩をすくめながら私に質問返しをする。
「『人からプレゼントとかとして貰うなら』ってさっき言ってたけど、私はそれに見合うようなモノ、返せないもん。貰ったら貰いっぱなしって気持ち悪いし、ちょっと重いかも」
ガラス細工や宝石たちは本当に見事で、時間が許すならばずっとここにいて眺めていたい、それくらい魅力的だけれど。
プレゼントとして貰うにしても、それを受け取るに値する何かを私ができるわけではなく、しかもそれをくれた人に何かを返せるとも思えない。貰っても申し訳なくなりそうだ。
「なるほどね」
蒼井くんは考え込みながら、彼の足元にちょこんと座っているティレニアの方を見ている。黒猫もじっと蒼井くんを見つめ――ややあってティレニアがひと声、「にゃあ」と鳴くと、蒼井くんがまたこちらに視線を戻した。
「うん、よし」
「ん?」
謎にうんうん頷くクラスメイトに、私は聞き返す。何が『よし』?
「桐生さん、ここでバイトやらない? ちょうど探してただろ」
「……んん?」
唐突な展開に、私は思わず首をひねった。
「私、バイト探してるなんて話したっけ?」
そう、私は彼と面と向かって話したことがない。
「休み時間によくバイト情報誌見てるだろ。部活も入ってないみたいだし、すぐ帰るし」
私は目を見開いた。そんな私を見て、蒼井くんが朗らかに笑った。
「その反応、当たりみたいだね」
「お、おっしゃる通りで……」
ちょっとびっくりした。今のところスーパーのレジ打ちのアルバイトに入っているけれど、何かもっと条件がいいところがあるなら儲けものだと思って、確かにサイトやらフリーペーパーやらを片っ端から見ているところだったから。