そんなことを考えて、気づくと朝だった。着替えもせず制服のまま部屋の床で寝てしまっていたのだ。今日は学校を休もう。今日は、神田さんの家に行って直接話そう。
そう決めて、支度を済ませて家を出る。母に怪しまれないようにいんたー一応制服は来て家を出る。向かう先はもちろん学校ではなくて神田さんの家。
ぼくは夢中で走った。じっとしていられなかった。一分一秒でも早く神田さんに伝えて謝りたかった、そして言い訳を聞いてほしかった。ぼくははひたすらに走った、周りの目も気にせずに力の限り。
神田さんのマンションについた。身だしなみを整えて呼吸を整えて、インターフォンを鳴らす。鳴っている時間がとてつもなく長かった。
言いたいはずなのに、絶対に言わなきゃいけない筈なのに、ぼくは言いたくなかった。言った後、どうすればいいのか分からなかった。また神田さんとよりを戻すのか、それとも誤っておしまいなのか。
ぼくの記憶は昨晩で完全に戻った。それでも、神田さんをゆかりとは呼べない気がした。たしかに昔は呼んでいた。初デートの時も、お泊りした時もすべて覚えている。でも、昨日までぼくの中では、神田さんは神田さんだった。記憶が戻ったとはいっても急には戻せない。それは昔の僕だけでなく、昨日までのぼくもまだ生きているから。だからぼくにはどうすればいいのか分からなかった。神田さんと付き合ってたのは僕だし、その思い出も全部ぼくの築いたものではない。それなのにそれをぼくが奪っていいのか。
「はーい、凛君?」
インターフォンから、神田さんのお母さんの声がした。
「あの、」
ぼくのとっさの勇気もお母さんからの言葉によって無意味になる。
「ゆかりね、今日は学校行ったんだ。心配してくれてありがとね。」
予想外だった。まさか今日に限って、いや、昨日のあれがあったからか。ぼくはお礼だけ言って、また走り出した。学校に向かって神田さんのことだけを考えて。学校に向かって最短ルートで駆け抜ける。
学校の予鈴が鳴った。閑静な住宅街にぼくの走る音に加えて、予鈴が響いた。ぼくが夢中で学校を目指した。だから周りの人なんかまったく気にも留めなかった。
「梅野君」
ぼくは後ろから聞こえた声に、反射で振り返る。そこには神田さんが立っていた。今まで聞こえていた足音と予鈴がぴたりと止んで、住宅街は静寂に包まれた。
ぼくは、探していた神田さんを見つけあれたのに、アンだけ伝えたいことがあって家から飛び出してきたのに、いざ目の前に神田さんがいると何も考えられなくなってしまう。言葉が出ない、いやまだ口にしたくないぼくがいる。心の奥深くに眠るいまのぼくが、すべてを話す勇気を持てていない。
ぼくが決めていいのか。また神田さんの彼氏になりたいと思ってしまってもいいのか、急に現れたぼくが告白していいのか。
でも、もう決めた。弱いぼくを演じるのはやめる。だって昔の強い僕も、今のぼくも、ぼくは僕だから。
ぼくはまっすぐに彼女を見て言う。
「ゆかり」と。
そう決めて、支度を済ませて家を出る。母に怪しまれないようにいんたー一応制服は来て家を出る。向かう先はもちろん学校ではなくて神田さんの家。
ぼくは夢中で走った。じっとしていられなかった。一分一秒でも早く神田さんに伝えて謝りたかった、そして言い訳を聞いてほしかった。ぼくははひたすらに走った、周りの目も気にせずに力の限り。
神田さんのマンションについた。身だしなみを整えて呼吸を整えて、インターフォンを鳴らす。鳴っている時間がとてつもなく長かった。
言いたいはずなのに、絶対に言わなきゃいけない筈なのに、ぼくは言いたくなかった。言った後、どうすればいいのか分からなかった。また神田さんとよりを戻すのか、それとも誤っておしまいなのか。
ぼくの記憶は昨晩で完全に戻った。それでも、神田さんをゆかりとは呼べない気がした。たしかに昔は呼んでいた。初デートの時も、お泊りした時もすべて覚えている。でも、昨日までぼくの中では、神田さんは神田さんだった。記憶が戻ったとはいっても急には戻せない。それは昔の僕だけでなく、昨日までのぼくもまだ生きているから。だからぼくにはどうすればいいのか分からなかった。神田さんと付き合ってたのは僕だし、その思い出も全部ぼくの築いたものではない。それなのにそれをぼくが奪っていいのか。
「はーい、凛君?」
インターフォンから、神田さんのお母さんの声がした。
「あの、」
ぼくのとっさの勇気もお母さんからの言葉によって無意味になる。
「ゆかりね、今日は学校行ったんだ。心配してくれてありがとね。」
予想外だった。まさか今日に限って、いや、昨日のあれがあったからか。ぼくはお礼だけ言って、また走り出した。学校に向かって神田さんのことだけを考えて。学校に向かって最短ルートで駆け抜ける。
学校の予鈴が鳴った。閑静な住宅街にぼくの走る音に加えて、予鈴が響いた。ぼくが夢中で学校を目指した。だから周りの人なんかまったく気にも留めなかった。
「梅野君」
ぼくは後ろから聞こえた声に、反射で振り返る。そこには神田さんが立っていた。今まで聞こえていた足音と予鈴がぴたりと止んで、住宅街は静寂に包まれた。
ぼくは、探していた神田さんを見つけあれたのに、アンだけ伝えたいことがあって家から飛び出してきたのに、いざ目の前に神田さんがいると何も考えられなくなってしまう。言葉が出ない、いやまだ口にしたくないぼくがいる。心の奥深くに眠るいまのぼくが、すべてを話す勇気を持てていない。
ぼくが決めていいのか。また神田さんの彼氏になりたいと思ってしまってもいいのか、急に現れたぼくが告白していいのか。
でも、もう決めた。弱いぼくを演じるのはやめる。だって昔の強い僕も、今のぼくも、ぼくは僕だから。
ぼくはまっすぐに彼女を見て言う。
「ゆかり」と。