「ごめんごめん。真由は、ちゃんとバレンタインチョコあげたもんね! そりゃ、ちょっとホワイトデーのお返し、期待しちゃうもんだよ」



確かにわたしは蓮にバレンタインチョコをあげたけれど、それはわたしだけではないはずだ。



「夏葉だってあげたじゃない」



「まあね! だから、あたしも期待しすぎは良くないって思ってるよ」



夏葉は、さばさばとした感じで言った。



「それは?」



わたしは、栞を挟んでその本の表紙を見せた。



「ちょっと貸して」



わたしは椅子に座ったまま、その本を夏葉に渡した。



「へぇー、キスかぁ」



ぺらぺらと本のページをめくり、わたしの栞をはさんでいるところを夏葉はまじまじと読んだ。



「……うん」



「もしかして真由、蓮くんとキスしたいの?」



夏葉の唐突すぎる質問に、わたしは肩を震わせそうになった。



「いや、その……。しなきゃ絶対嫌って訳じゃないけど……」



「照れてるな!」



わたしの様子を見て、うしし、と夏葉は笑った。



「ちょっとやめてよー。そういう夏葉は、もうしたの?」



「いや、まだしてない。でも……したいな!」



「なんだ、結局は自分もしたいんじゃん」



じとっとした視線を送りながら、わたしは夏葉に突っ込む。