一ヶ月後。

 良二は相変わらず忙しい日々を送っている。

 あれからずっと、何も反応しない良二は、女性からの交際を一切断っていた。

 どうせ交際してもフラれるのは分かっている。

 
 そう思ったのだ。


 だがずっと疑問なのは、何故、空にはあんなに反応したのだろう?

 初めて見た診察の時から、自分の意思とは関係なく反応していた。


 実際に間近で見ると、胸がドキドキして…。


 1つになれた時は言葉にならない程感動した。

 
 ずっと空の事が忘れられない。

 忘れて行ったシュシュは、いつでも返せるように持っている。

 でもあれっきり、空には会えないままだ。


 病気や怪我などにならなければ、病院に来る事なんてないから会う機会はないのかもしれない。


 この忘れ物…どうしよう…。


 そんな事を考えながら良二が歩いてくると。


 他の男性医師と空が歩いているのを目にした良二。


「あ…」


 想いより先に体が動いで、駆け寄って行く良二。




 だが、空は医師と共に相談室に入って行った。


 そこは、患者と医師が手術などの相談をする部屋である。

 強制的な手術や、高額費用の手術、命がかかっている手術などの重大な事も相談される。


 良二はハッと何かを思いだした。

「そう言えば…あの時…」


 空の心音を聞いた時、良二は「問題ありません」と伝えたが、ちょっと引っかかっていた。


 だがそれは、良二の専門分野でもなかった為、別の担当医師へ報告していた。


 忘れ物を返すのは、またの機会にしよう。

 そう思った良二だが、何故か空の事が気になってしまった。