「・・・ちゃったの・・・」
「なんだ? 」
「だから・・・できちゃったの・・・赤ちゃんが・・・」
「え・・・」
良二は耳を疑った。
だが・・・
嬉しさが込みあがってきて、空をギュッと抱きしめた。
「本当か? 」
「はい・・・」
「そうか。今、どのくらいなんだ? 」
「6週目です。今日、病院に行ってきました」
「じゃあ大事な時じゃないか」
「はい、でも・・・。色々問題があるので、どうしようかと悩んでしまったのです」
「心配しなくていいから、ちゃんと産んでくれ」
「いいんですか? 」
「ああ、心配するな。俺がついているから」
嬉しい・・・
空は喜びが溢れてきて涙が止まらなかった。
「一人で悩ませてごめん。これからは、俺もいるから。ちゃんと頼ってくれ」
良二の腕の中で、空はそっと頷いた。
その晩は、そのまま良二の家に泊まった空。
久しぶりに一緒に過ごす時間。
隠していた事を話したことで、空はどこかスッキリした顔をしていた。
良二も空が戻ってきて喜びを感じている。
一緒に生きて幸せになる。
良二はそう決めた。
それから数日後。
空は幹夫に相談に来た。
妊娠した事を話すと、幹夫は驚いていたが、空が産む決意をした話をすると全面的に協力してくれると言ってくれた。
先ずは心穏やかな環境で出産する事を考え、出産後に手術を行う話になった。
空は海外にいる父にも、その事を連絡した。
空の父・砂原海士(すなはら・かいじ)。
現在58歳になるが、とても若々しく純粋な日本人なのに彫りの深い顔立ちでキリっとしている。
スラッとした長身で、優しいタイプの紳士。
海士は空から電話で連絡を受けて、とても大喜びしていた。
すぐにでも日本へ戻ると言って、三日後に帰国してくる事になった。