「いい? 藤先生には二度と着きまとわないで! 一般女性は、医者は金持ちだからって、すぐ近づこうとするんだから。困るのよね」


 ズキン・・・空の胸に痛みが走った・・・。

 そっと胸を押さえる空。


「分かったなら、さっさと行って! 」

 佳枝がそう言い放つと、空はハッとしてその場から走り去った。

「全く、あんな女のどこがいいのかしら? 」


 空が走り去った後。


 良二がやって来た。

 佳枝は良二を見た。


「あら、今帰り? 」

 良二は香枝を見ると、ちょっと嫌な顔をした。


「なんなの? その嫌そうな顔は。いくらフラれた女でも、そこまで嫌な顔しないでよね。あんたに着きまとっていた、邪魔な女追い払てあげたんだから」

「邪魔な女? 」

「そうよ、無駄に背の高い色気のない女。私とあんたが結婚前提だって言ったら、顔色変えて逃げて行ったわ」

「はぁ? なんて事言うんだ! 」

「なによ、実際結婚前提で付き合っていたじゃない。あんたが起たないから、諦めたけど。どうせいいでしょう? ただの着きまといなんだし」


 良二はぎゅと拳を握り締めた。

「ふざける! 誰が着きまといだ! 着きまとっているのは、お前だろ! 」

「な、なんなの? 誰が着きまとっているの? 私はただ、貴方には相応し女性が着いてほしいから言っているのに」

「よけいなお世話だ! 二度と、俺の事に口出しするな! 」

 
 良二は走って行った。


 佳枝は信じられない顔をしている。

 良二は走ってきたが、空の姿はどこにも見当たらなかった。


 携帯を取り出し空に電話してみた。

(おかけになった電話番号は、電波の届かない場所にあるか・・・)

 電源が入っておらず、繋がらなかった。