「空ちゃん、明日は仕事? 」

「明日は休みです。私、週に2日か3日しか仕事していませんから」

「え? そうなの? 」

「はい。だって、仕事に拘束されるのってつまらないじゃないですか。好きな事して、自由に暮らしたほうが楽しいですから。生活費は、父が送ってくれますし。その日の気ままに暮らしたいんです、私」

「そっか。いいんじゃないか? それでも。自由が手に入るなら、楽しめばいいんだから」

 空はちょっと意外そうな目をして、良二を見た。


「ん? どうかした? 」

「いえ・・・。そうやって言ってくれたの、先生だけだから」

「え? 」

「みんな、こんな事言うとすごく引いてしまうんです。当り前ですよね、必死に働いている人ばかりですから」

「そんな事、気にする事はないよ。人それぞれ、与えられた人生だから。空ちゃんは、自由な人生が選べた。ただそれだけじゃん」

「そう言ってもらえると、心が軽くなります」

 良二はそっと、空の手を取った。


「どんな空ちゃんだって、俺は好きだよ。素直でいいじゃん」


 また…

 空の胸がドキッと鳴った。


 良二の優しい眼差しが、とても嬉しくて…


 そのままギュッと、空は良二に抱きついた。


「先生…今日は、このまま一緒にいて下さい」


 ギュッとしがみつく空が、なんとなく怯えているように良二には見えた。

 良二はそっと空の頭を撫でた。