その日は良二も早く帰れる為、とても楽しみに待っていた。
約束の日。
良二が買えり支度をと携帯が鳴った。
「はい、もしもし? 」
(先生? 砂原です)
「空ちゃん? どうしたの? 」
(今日、病院に来ていたんです。今、外にいます)
「え? 分かった。すぐに行くから待ってて」
電話を切って、急ぎ足で良二は外に向かった。
病院の門の前。
グレーのスーツを着た空がいる。
肩から大きめのバッグをかけている。
「お待たせ」
走って来た良二。
私服の良二もカッコいい。
ブルーのシャツに黒系のスラックスに黒い革靴。
背の高い良二はなんだかモデルのようで、空はちょっとだけ見惚れてしまった。
「連絡ありがとう。病院に来ていたんだ」
「はい」
「どっか、具合でも悪いの? 」
「いいえ。…今度、手術を受けるかどうかの話しがあったので」
「手術? 」
「あ、大したことじゃないので。手術は受けなくていいみたいです」
「そうなんだ」
「ごめんなさい、心配かける事言っちゃって」
「いや。それより、夕飯まだだろう? 何か食べたいものある? 」
「先生は? 何が食べたいですか? 」
「うーん。とりあえず、歩きながら決めてもいいかな? 」
「はい」
良二と空は歩き出した。
少し歩くと、良二がそっと空に手を出した。
空はちょっと驚いて良二を見た。
「嫌? 手つなぐの」
「ううん、嫌じゃないです」
空はそっと、良二の手をとった。
空を気づかって、道路側を歩いてくれる良二。
2人が歩いていると、けっこう絵になる。
背の高い2人ゆえに目立ってしまうのもある。
良二と空が来たのは駅前にあるレストラン。
最上階にある夜景の綺麗なレストランで、ゆっくり食事する事にした。
お酒は飲まないがノンアルコールのシャンパンを飲みながら、美味しいフルコースを楽しんだ。
他愛ない話をしているだけ。
でも、とても楽しくて。
良二は自分の事を沢山話してくれた。
良二が話してくれた事から、空も自分の事を話した。
父はIT企業の社長で、世界的に支店をもっていて飛び回っている人。
母は3年前に病気で亡くなっている。
兄がいるが父の会社を継ぐために海外で修業している。
そして空は現在は警察署事務員として働いている。
父が留守が多くて、家では1人で居る事も多くて、自由に暮らしている空。
話をしていると、空はわりと天真爛漫で楽しく暮らしているようだ。
「ねぇ空ちゃんは…彼はいないの? 」
そう聞かれて、空はちょっと照れ臭そうに笑った。
「ずっと前にフラれました。だから今は1人ですよ」
「え? 空ちゃんの事フル男がいるのか? 」
「うーん。やっぱり男の人って、背の低い女性がいいみたいね」
「え? 俺はそんなことないけど」
空はじっと、良二を見つめた。
「有難う、そんな事言ってくれるのは先生だけだよ。嬉しい」
そう言って微笑む空。
そんな空を見て、良二は…。