駆け足で向かった先は好きなひとがいるところ。


「こんにちは……!」

「あ……咲雪(さゆ)ちゃん……」


引きつった顔を見た時になんとなく予測がついた。

決して勘が鋭いとか察しがいいとかじゃない。

前からわかっていたことだから。


「大丈夫です……それでも会いたいです」

私は人目も気にせず、頭を下げる。

入り口で深く頭を下げるなんてまわりからみたら滑稽かもしれないけれど、そんなことどうだっていい。

私は一秒でもはやく会いたい。そのために駆け足で通ってるんだから。



「結翔(ゆいと)くんはしあわせ者ね」

「会いに行っても……?」


優しい笑みで頷いてくれた朝陽(あさひ)さんにもう一度頭を下げて階段を駆け上がって部屋に向かった。

会いたい……けれど拒絶されたらどうしよう。

近づくにつれて不安が募っていく。