普通の唐揚げよりも茶色くて、少しツヤがある。タレが絡めてあるのかな、と想像しつつ、まだ熱そうな唐揚げをふうっと冷ましてから口に運んだ。

サクッといい音がして、そのあとジュワーッと肉汁が出てくる。衣にかけられていた甘辛いタレと舌の上で絡み、絶妙にまろやかだ。厚めの衣が口の中でザクザクと音を立て、噛めば噛むほどタレが染み出てくる。

仕上げにグイッとビールを呷れば、もう百二十点だった。


「んー、たまらないねえ」

「そうでしょ。この唐揚げが大好物で、毎日のように注文してくる常連さんもいるんだよ」


私の感想に、莉子は自慢げに胸を張る。


「へえ、その常連さんとは気が合いそう。今日は来ないの?」

「えーっと、今日は葉月が来てくれるっていうから、貸し切りにしてもらったんだ。ゆっくり話したかったし」

「そうなんだ。なんか気を遣わせちゃって申し訳ないなあ」


せっかくなら常連さんにも会ってみたかったけれど、他にお客さんがいたらなかなか莉子と話せなかったかもしれない。店主の男性も必要以上に声をかけてこないし、私たちの会話を遮らないようにしてくれているみたいだ。

ふたりの細やかな心配りに感謝しつつ、私は再び唐揚げを頬張った。


「ところで葉月、今日は伊勢神宮にお参りしたの?」

「ううん。こっちに着いたの夕方だったから、少しおはらい町を散策しただけ。明日行こうと思ってるんだけど」


ごくんと唐揚げを飲み込んで答えた私に、莉子は小さく頷く。


「そっかそっか。じゃあぜひ外宮から行ってみて」

「……げくう?」


聞き慣れない言葉に首を傾げながら、スマホで検索をかける。伊勢神宮という文字のあとにスペースを空けて【げ】と打ち込むと、予測の一番上にそれらしき単語が出てきた。


「これ?」


画面を見せれば莉子は「そう、それ」と指を差す。