「ごめん!」

彼女と再会できた、僕の第一声だった。

嬉しさが込みあがってきたが、まずは謝らなければならないと、
僕の本能が言っていた。

付き合ってから一度も見せたことのない涙が溢れてくる。

そのせいで視界が曇り、半透明な彼女も見えない。

「なんで謝るのさー。むしろ悪いのはわたし!死んじゃってごめんね。」

死ぬ前の喧嘩が無かったかのように、彼女は陽気に話していた。

涙を拭きとってみると、彼女との距離が近くなっていた。

「ほら!会えたんだから元気、だして!」

彼女はいつも通りの明るい性格で、たくさん口を動かす。

そのおかげで少し落ち着いたのか、僕の中で急にたくさんの疑問が浮かび上がってきた。

彼女の言葉を遮って、僕は問いかけた。

「ど、どうして幽霊になってここに?」

「どうしてって…。気づくと幽霊でー、つかさの家の前にいてー。
 つかさに会いたかったから?
 多分わたし、つかさの守護霊なんだと思う!」

「えー…。普通に考えて、冬華。
 お前、成仏できてない幽霊、悪く言えば悪霊になってるぞ。」

「あ、悪霊!?そ、それってこの世ではやばいやつじゃ…。」

彼女は多分、この世に心残りがあってこうなったのだろう。

きっと明るく振舞っているのも演技。

彼女自身も気づいているだろう。

少し、揺さぶりをかけてみるか。

「冬華。自らで成仏するか、お寺の人に痛ーく成仏されるか、
 どっちがいい?」

彼女の表情が少し、ゆがんだ。そして、焦りも見え始めた。

ごまかそうとしている返事も動揺している。

「冬華…。かくしごとは…?」

「しない約束ですね!!ごめんなさい!!」

「はい。よろしい。」

こうして、いつも通りの様子で、僕と冬華の会話が始まった。