彼女の葬式には行かなかった。いや、行けなかった。

広い部屋の片隅で蹲り、絶望に浸っていた。

冬華が亡くなった知らせを聞いてから、ずっとこのままだった。

僕が彼女を殺した。そうとしか考えられなかった。

冬華は僕の彼女で、僕の家に来たとき珍しく喧嘩をしてしまった。

そして、その帰り、彼女は交通事故で亡くなった。

「今日はもう帰ってくれ。」

僕が放ったこの言葉がズキズキと、僕を痛めつける。

言わなければよかった、と後悔しても彼女は帰ってこない。


 カーテンの隙間から光が差し込んでくる。

無意識に足が動いた。

ここは二階。死ねる、かもしれない。

重い足取りで窓に近づく。

すぐそばに立った瞬間、カーテンが揺れ動いた。

「つかさ。」

聞きなじみのある声が僕を呼んだ気がした。

幻聴だろうと思ったが、一応後ろを振り向く。

「つーっかーさ!」

独特な名前の呼び方。揺れ動くグレーの長髪。愛おしかったあの笑顔。

見られることを望んでいた、半透明の姿。

幽霊となった彼女、冬華がそこにはいた。