「すず、いただきますは?」

「いたーきまーす!」

手を合わせて元気よく挨拶すると、すずはフォークを下手くそに持ちながらも器用にパスタを絡めた。すずが食べ始めたのを見届けて、私もカルボナーラを口に運ぶ。

「ん、美味しい」

「そう?よかった」

想像以上に美味しくて私は目を丸くした。すずもおしゃべりせずに一生懸命フォークでパスタをすくっている。

「柴原さん料理上手なんだ」

「いや、美咲には負ける。いつもご飯作ってくれてありがとう」

「……うん」

躊躇いもなく言われると素直に受け取るのが恥ずかしい。

柴原さんは最近よく感謝の気持ちを伝えてくるようになった。事あるごとに“ありがとう”と言ってくれる。それに対して私は何も言えていない。私だって柴原さんに“ありがとう”という気持ちはあるのに、だ。

そしてその前に、私にはひとつ謝りたいことがあった。自分で言っておきながら、ちょっと言い過ぎたなと思うことがあるのだ。そろそろ勇気を出して謝っておくのがベストかもしれない。

私は一旦フォークを置くと、きちんと座り直した。