「すずお風呂は?」

まとわりつくすずを剥がしながら、柴原さんが聞く。

「まだー」

「じゃあ入っておいで」

「パパと入るー」

すずはパパに剥がされてもめげずに纏わりつき、パパがいいパパがいいとリクエストだ。

「あ、じゃあお願いしまーす」

いつもすずと一緒にお風呂に入る私は簡単に引き下がり、柴原さんにお任せして二人がお風呂に入っている間に家事をこなそうと考える。
なのに、

「ねえねも入るー」

「は?」

すずが突然に手を引っ張るのでバランスを崩して倒れそうになった。柴原さんがすかさず私を支えてニヤリと悪い顔になる。
なに?嫌な予感。

「なるほど、すず、いいアイデアだ!美咲も一緒に入ろう」

「いやいやいや、ないわー」

首と手を横に振って完全拒否をしているのに、二人は私を連れていく気満々だ。

「ひゃあっ!」

突然に視界が揺れて、私は目を丸くする。
何事かと驚いたが、ただ柴原さんが私を抱きかかえただけだった。
いや、何で?

「あー!すずもだっこしてー!だっこだっこ!」

すずが足下でピョコピョコ跳びはね、柴原さんはいとも簡単に私を抱く反対側にすずを抱えた。

「さ、お風呂に入ろう」

「おっふろー!」

「ちょっと、無理だから無理だってば。むーりー!」

私の悲鳴が部屋中に響くと同時に、柴原さんとすずが楽しそうに笑った。


まだ結婚はしてないし気持ち的にもまだまだ先になるんだろうけど、なんだかすごく家族っぽい気がして、私は心があったかくなった。

お姉ちゃんがくれた出会い、大切にしていこうと思う。