俺が降り立ったこの日本という国で、もう一度いま流行の顔と体型に整える。

ファッションも髪型も、そのまま写し取ればそれでいい。

人物設定も考えた。

大富豪の息子というのが、ウケがいいらしい。

ではその方向で。

黒塗りの高級車で、涼介の通う高校の正門に乗り付ける。

俺は今日からこの学校に転校生として侵入する。

もちろん、奴と同じクラスだ。

車から降りたとたんに、登校途中の人間どもの注目を、一身に集めた。

当たり前だ。

ざわざわと俺を見てささやき、噂をするその雑音が心地いい。

「やあ、涼介、おはよう。キミの登校してくるのを、待っていたよ」

周囲には、すっかり黒山の人集りができている。

俺がその状況で、一番に話しかけてやるのは、涼介、お前だ。

「職員室まで案内してくれるか。幼なじみの、仲じゃないか」

現れた涼介は、思いっきり嫌そうな目で上から俺を見下ろす。

周囲の観衆がざわついた。

「いつから幼なじみになったんだ。俺の中では昨日突然押しかけてきた、頭のおかしな奴ってだけだけど」

涼介の持つオーラが、普通の人間とは少し違うような気がするのは、その威圧的な態度と体格のせいか? 

腕組みをして、思いっきり見下ろす涼介に、俺は負けじと言い返す。

「いいから、職員室まで案内してくれ。それくらいは出来るだろう」

目が合ったので、にこっと微笑んでみせたら、その笑顔に周囲を取り囲む女どもから悲鳴があがった。

その様子に、涼介は驚いたような、呆れたような顔をして、頭を横に振る。

「にんにくチューブで追い出されたくせに」

「転校生なんだ。案内しろよ」

仕方なく歩き出した涼介の後ろを、ついて歩く。

その俺の後ろに、野次馬どもの行列が出来る。

俺は涼介の横にならんだ。

この俺さまの隣で並んで歩けるだけでも、光栄と思え。

「名前すら知らないのに、なにが幼なじみだ」

「鷲頭獅子丸(しゅとうししまる)っていうんだ。それくらいは、覚えておけ」