『東京都江戸川区の路上で二十才男性が倒れているのを通行人が発見』
『齋藤 政さんは運送会社勤務ですでに会社を辞職 病院に運ばれましたが本日未明亡くなりました、死因は心臓発作 事件性はないそうです』

『次のニュースです……』

暗い探偵事務所の中
俺『古谷 快斗』はニュースに釘付け、胸にあるのは救えなかったことの苦しみ

『事件性はない』とニュースでは言われているが実際は違う、ここ最近新たな殺人事件が起きている
それが鏡を使った殺人、鏡を使ったと言えば刺殺したかのように聞こえるが違う

鏡の世界で相手を殺害する殺人
嘘や冗談に聞こえるかもしれないがこれが真実だ
鏡つまり裏の世界で入り相手を殺す、それにより現実世界の殺害相手も心臓発作で死に至る

絵に書いた完全犯罪が実現出来るというわけだ
世間では事故扱いだが警察の中ではこのような事件を『裏カミカクシ殺人事件』と呼ばれている
だがデメリットも存在する、

鏡に入った瞬間現実世界の体は無防備の状態になる現実世界との通話も不可能に、
さらには十五分間の間しか鏡の世界つまり裏の世界では活動できない
もし時間を超えた場合当の本人も心臓発作で死に至る、こういうと十五分以内に帰って来ればいいと思うが、
それが出来ないのだ

いや正確には出来る

ただ鏡の世界ではこの世すべての時間の流れが止まり時計の針も動かない、一種の静止画に等しい
時計も動かない太陽も月も動かない、
そんな中十五分を見極め帰れる人はそうそういるはずがない
そのため事故を塞ぐため警察でも限られた人しか入ることは出来ない、
時間を測定できる者つまりは体感時間が正確な人者しか
だが近年裏カミカクシ殺人事件は増加の一方警察も人数不足のため、
一般の捜査機関つまりは探偵などにすべての情報を伝え、測定者試験を実施
それにより犯罪への防止策を取ろうとした、
そしてその試験を掻い潜り入る資格を持ったものを警察ではこう言われている

『移動者|《ムゥーヴァ》』と……

「また助けられなかったんだね…」

そう呟くのは俺のパートナーつまりは相棒の『高橋 結衣』俺とバディを組み信用を仕切った仲である、
俺たち移動者|《ムゥーヴァ》は単独で行動してはいけない
単独では、あくまで俺は鏡の世界で犯人を捕まえ殺人を止めることしか出来ない、簡単に言えば足止めだ
俺が殺人を止めても犯人がまた現実世界に戻り、入り直したら意味が無い
十五分という限られた時間でしか動けないため、当然後から入ることで時間に猶予が与えられる
二人一組になり鏡の世界と現実世界
裏と表で同時に捕まえる必要がある
裏で犯人を足止め、表で犯人の身体を拘束
それが今の裏カミカクシ殺人事件を抑える唯一無二の方法
そのため一番相性がいい組み合わせが用意される

そこで出会ったのが今の相棒 『高橋 結衣』だ

静かな部屋にインターホンが一回鳴り響いた

「はぁーい、空いてますよー」

ドアから入ってきたのは六十代男性
机をまたぐかのように座り込むと怯えた口調で男性は話し始めた

「すいません山口 友也と言うんですが…ぼ、ぼく…殺されるかもしれないんです……鏡をふと見た時そこの中に僕がいるんです、、、表現出来ないんですが…殺されるって感じるんです、、、」

「だからその犯人を捕まえてください!」

間違いない殺される、
確信できる

予知と言うにはアバウトかもしれないが鏡の中に自分がいる、
それはつまり現実世界の自分が消え裏の世界に閉じ込められることを指す、
殺害されそうになった人は皆口を揃えて言う
しかもこの男は自分の姿が見えたそうするとあと一日いや五時間以内に事件は発生する
事件から一週間の場合は相手の顔がわからない、
だがそれが日に日に顔が認識出来るようになっていく
そして事件発生時は顔がはっきり見える

自体は急を急いだ

彼に徐々に詰め寄った、それを確認した高橋は一枚の鏡を取り出し、山口さんは怯えた

「ひ!な、なんですか!?」

「ちょっと我慢してくださいね」

そう言い終わると彼の髪の毛を抜いた
小さな悲鳴が探偵事務所を走り歩いた
「か、髪の毛を抜くなら言ってくださいよ!」

「すいません…」

依頼者が探偵事務所から出るのを確認し、結衣が鏡を取り出した
結衣の片手には白く濁った液が入れられている瓶
次の瞬間白い液体を鏡に数滴かけた、
満面なく行き渡るように軽く拭くと鏡は比べ物にならないほど綺麗に反射した

そこにさっき抜いたばかりの髪の毛を鏡の上に置く
数秒もしないうちに鏡は徐々に光を強め、反射を失い白く曇った
じゃあ鏡には何が写っているのか、
そう写っているのは他ならぬ山口さんなのだ

先程垂らした液体、これが鏡の世界に入るためのトリガーとなる液体
入手経路も不明、
ただ今までの犯人全員がこの液体を所持していた、成分も何かもわからず未知と言っても過言じゃあない
ただわかるのがこの液体で拭いた鏡に血液を垂らすと裏の世界に入ることができる

そしてこの鏡に髪などの遺伝子を置くと当人の行く末が見える、
もし鏡の世界で殺されないとしたら鏡は何もうつさない、
しかし裏の世界で死ぬとしたらその一場面が鏡に映し出される
つまりは占いに近い万能液だ、
これも警察からの支給のため詳しいことは下の俺らには伝えられていない

鏡が映し出したのは暗い白黒の駐車場、静止画のような光景を注意深く見た
そのとき足音が何歩も聞こえた一人は走り、もう一人はゆっくりと歩いていた
だがそれが誰なのかはわからない
手がかりと呼べるにはあまりに小さなもの

結局これと言ったものは映し出されるず、殺害手段や殺害場所すら不明のまま鏡は元に戻っていった

「ねぇ快斗、これどうみる?」

「どう見るも何もこれじゃあ殺害場所すらわからん…」

この未来予知とも言える方法は一件メリットだけあるように見えるがそれは大きな間違い、
確かに殺害場所 武器などはわかるが二回目を見ることは不可能

だったら動画や写真で取ればと言われるが写らない、
そうどんな投影器具でも鏡に写った内容は写真にとる事が出来ないんだ
そのため探偵たちはこの数秒の映像に全てをかけている、常に1か0しかない
失敗すれば依頼人は死ぬ、成功すれば依頼人は助かる

「よし、行くか……」

「じゃあ行こうか相棒!」

結衣はそう呟くと握った手を天に突き上げた、それを合図に俺も結衣の拳に軽く打ち付けた

さぁ推理開始だ