夢魔が消滅されたからか、再び現実に戻ってくる。結城は先に目覚めていたのか、制服についた砂を払っている。緑沢は気絶したままだ。どうやら、全然時間は経っていないようだ。少なくとも、夢の中での体感時間よりも短い時間しか経過してない。便利なものだ、夢の中で訓練とかしたら、もっといいんじゃないか?
「お疲れ、鉄。先、授業戻ってるから。緑沢君、もう一般人と同じだから、魔力は使っちゃだめだからね」
「分かってるよ、倒れてるやつに追い打ちかけるような真似しねぇよ。ともかく、これでしばらく、落ち着けるのか?」
「さあ? 現実に出てくる夢魔は減ると思うけど、今回の寄生型みたいな夢魔が増えてくると考えると、手放しでは喜べないね。まだまだ、仕事は山積みだよ」
 肩をすくめながら答える結城。言葉にとげはあるけど、今までのツンツンしている態度じゃなく、愛のムチって感じだ。突っ走りがちな俺の手綱を任せるには、とても安心できる相棒だな。
「そうか、だったら、寄生型と戦うために、魅了の呪いを分析して解明しねぇとな。女にはかからなくて、男にしかかからないメカニズムがあるはずだろ」
「そうね、協会が新しく開発してくれるはずよ。次は、鉄の分もあるといいね」
 まだまだ問題は山積みだ。協会とやらに認められないことには、結城にも認められなさそうだ。どうせだったら、「フレ」じゃなくて「OK」にすればよかったなぁ、なんて後悔も後の祭りってやつだな。夢魔は、成長というよりも進化した。魔力の塊みたいな存在が進化できたなら、俺もできるはずだ。
 結城のために、結城を守るために、俺は強くならなければならない。久しぶりに、良いスリルが味わえそうだな。




<あらすじ>
和良比高校の番長として、不良の頂点に君臨している、如月鉄。ある日、化け物と戦うことになり、幼馴染の結城が魔法少女だと知る。
自分の中に眠る「魔力」という力を、訓練によって引き出す。そして、結城とともに化け物と戦う日々を送る。
だが、自分と同じように、魔力を使うことで強さを手に入れた、緑沢 雅が、和良比高校を潰しにくるとの噂を聞く。さらに、化け物の発生源になっているかもしれないとの情報も得た。
ついに、緑沢が和良比高校に乗り込んできたとき、結城を守るために、如月は不良として立ち上がる。