一歩、二歩……。
下は怖いから極力見ない。
できるだけ、滝島さんの顔を見る。

「嘘っ!?」

あと少しというところでひときわ強い風が吹いた。
落ちないようにロープを両手で強く掴む。
心臓は先ほどまでよりも速く、大きな音で鼓膜を震わせている。

「伊深、来い!」

残り三歩を夢中で渡り、滝島さんの胸に飛び込む。

「よく頑張ったな」

「こ、怖かったですー」

半べその私のあたまを、ヘルメットの上から滝島さんがガシガシ撫でてくれた。
なんだかそれにドキドキするのは、さっきのあれがまだ治まっていないだけかな。

怖いアスレチックをクリアしたあとは、遅いお昼ごはん。

「おっ、旨そうだな」

お弁当箱を開けたら、にぱっと嬉しそうに眼鏡の下で目尻を下げ、滝島さんが笑った。