「あ、そうだ。
名前。
名前、茉理乃だったよな」

「そう、ですけど……」

なんで滝島さんが知っているんだろう。
ああ、きっとあの日、言ったんだ。
でも、なんで確認?

「名前で呼ばれた方が、好きな男から抱かれてるって錯覚できるだろ」

「……!」

わかっていたんだ、私が少しだけまだ、抵抗を感じていたことに。

「……茉理乃」

滝島さんの声が鼓膜を揺らす。
それは、まるで愛おしいものを呼ぶかのようだった。

ゆっくりと唇が重なり、あごにかかった親指が唇を開かせる。
そして――。

自分からもした方がいいとか、こういうことを言われると男は喜ぶだとか、滝島さんは実地で私に叩き込んでいく。