私が浴室を出ると、滝島さんは寝室でごそごそしていた。

「あ、ああ。
俺も浴びてくるからちょっと待ってろな」

入れ違いで今度は滝島さんが浴室へ消えていく。
そっと入った寝室は二度目のはずなのに、初めてのように見えた。

「滝島さんと……」

あの日のことを思いだそうとするが、靄がかかったように上手く思いだせない。
ぼーっと天井を見つめて彼が来るのを待つ。

「お待たせ」

しばらくして寝室に来た滝島さんは、Tシャツと黒のボクサーパンツだけになっていた。

「雰囲気なくて悪いな」

ふるふると首を横に振る。
シャワーを済ませてまた普通に洋服を着るなんで面倒だし、かといって全裸やタオル一枚もあれなので、これが正解だと思う。

「いいんだな?」

私の隣に座った滝島さんが、そっとあたまを撫でる。
黙ってこくんとひとつだけ頷いた。