見上げた五階建てのマンションは、私の住んでいるマンションよりも少し立派だった。
しかもオートロック集中玄関付き。
ちょっとうらやましい。
が、一度来たのに全く覚えていなかったけど。

「散らかってるけど」

そういうわりに四階角の彼の部屋は綺麗に片付いていた。

「おじゃましまーす」

よく考えたら男性の部屋に上がるのは初めてだ。
嘘です、あの日に来ました。
でもあれはノーカンでいい!
ノーカンでいいの!! 
それに、初彼である英人は私の部屋に来ても、自分の部屋には絶対連れていかなかった。

「適当に座ってて」

「はい」

黒の、たぶんフェイクレザーのソファーに腰掛ける。
すぐ前はガラステーブルにテレビ。
テレビの右側にスライド式の大型本棚が一台、置いてあるのが意外な感じ。
中にもびっしり本が詰まっているみたいだし。
左手のふすまを開けた奥は寝室だったなー、と。