「まあ、そこが伊深のいいところなんだろうけどな。
……それでだ。
そんな曖昧な考えだからダメなんだ。
もっと明確に、はっきりと!
これ、宿題な」

ニヤッと右頬だけを歪めて笑い、滝島さんがグラスのビールを飲む。
そういうのはいちいち絵になった。

「なに?
見とれてんの?」

レンズ越しに目のあった彼が、唇の端を少しだけ持ち上げて笑う。
途端にカッと、酔いが回ったかのように頬が熱を持つ。

「な、なに言ってんですか!
宿題ですね、わかりました!」

熱を下げようとソーダ水を飲むが、ドキドキと速い心臓の鼓動は治まらない。
きっと滝島さんはこういう女性の反応に慣れていて、からかっているだけなんだと思う。
ほんと、人が悪い。

「おう、頑張れよ」

眼鏡の下で目を細め、うっとりと滝島さんが笑う。
手が伸びてきてくしゃくしゃと柔らかく私の髪を撫でた。