入力した画面を確認し、プリントアウトして再び確認する。
誤字脱字もなさそうなので、上司に回した。

「よろしくお願いします」

「ん?
ああ、そこ置いとけばいいだろ」

ぺったん、ぺったんとその顔と同じで、不景気な餅つきのように判を押していた大石(おおいし)課長から興味なさげに決済箱を指さされ、少しカチンときたが努めて抑える。
今日はこれを乗り越えたら、楽しいことが待っているのだ。

「……今日は午後から外出予定なので、早めにお願いします」

「ああそうか。
いいよなー、遊んで給料がもらえるなんて」

嫌みも引き攣った笑みで耐えた。
このおじさんはいつもそうなのだ、私の仕事に理解がない。
会社の命令だから私にこの仕事をやらせ、自分としては無駄だと思いつつ申請書類をチェックして判をつく。
いや、チェックだけは真剣だ。
もしなにかあったときの自分の保身のために。

さっさと終わらないかなと、大石課長の頭頂部を見つめていた。
髪が薄くなってきた彼はカツラを使用しているが、本人はバレていると全く気づいていない。
がしかし、いつもなぜか少しズレているのでバレバレなんだけど。