店員を呼んで彼はサラダにラムステーキ、あとは自家製ソーセージとたこのアヒージョにバケットを頼んだ。

「……あなたになにがわかるっていうんですか」

仕事が忙しいからクリスマスは一緒に過ごせない、そう言われたあたりからつい先日まで付き合っていた彼、英人の態度が変わった。

茉理乃(まりの)はデブだな』

それまでは冗談めかしてそう言うときに愛を感じていたのに、同じ言葉でも悪意しかなくなった。
痩せなきゃと焦る一方でそれが仕事とのストレスと相まってドカ食い。
年が明けたら二キロも太っていた。

『お前みたいなデブ、誰が好きなるかよっ!』

吐き捨てるように言って去っていった英人の言葉はいまでも耳にこびりついて離れない。

痩せなきゃ。
痩せなきゃ、痩せなきゃ、痩せなきゃ。

強迫観念のように追い詰められ、次第に食べなくなっていった。

それでも今回の会に参加するために頑張っている間は、なにも考えずに済んだ。