「ここでいいか」

いいともなんとも言っていないのに、適当に見えてきたビアバーに連れ込まれた。

「ヴァイツェンと……お前は?」

「えっと……。
ビール、詳しくなくて」

メニューを一目見ただけで注文している彼とは違い、いくら見たところで呪文が並んでいるようにしか見えない。

「ビールは得意な方?」

「そんなに……」

はっきり言ってしまえばあまり好きじゃない。
ただ、苦いだけで。

「ふーん。
じゃ、アップルエールで」

「かしこまりました」

店員が下がってふたりきりになってしまう。
どうしよう、なんて戸惑う間もなく。

「お前さー、LINEブロックすることねーだろ」