意識を手放しつつある彼女にそっと囁く。
いまはこれでいい、朝になったらちゃんと伝えよう。

しかしながら。
彼女は早朝、俺を起こさずに出ていった。
いや、彼女が起きて着替えているのは知っていたさ。
気合いを入れてスカートのホックを留める様に、吹き出さないように我慢するのに必死だったとも。

「そーくるかよ」

送ったLINEはいつまでたっても既読にならない。
念のためにブロックチェックしてみたら、どうもされているようだ。

「もう二度と会うことはない、なんて思ってるんだろーけど。
そーはいくかよ、カイザージムの伊深茉理乃サン」

彼女はまだ、休み明け、ミツミの俺と再会するだなんて知らない。



【終】