「……私に魅力がないからですか」

部屋を出ていこうとして足が止まった。
振り返ると、耐えきれなくなった涙が彼女の目からぽろりと落ちる。
綺麗な、まるで水晶のような雫に、心臓がドクッと一度、脈打った。

『彼氏がデブって』

彼女がバーで言っていた、彼氏の言葉がよみがえってくる。
きっと彼女はその言葉に酷く傷つき、自信を失っている。

「そんなことねーよ」

ベッドに戻ってきつく彼女を抱き締めた。
心細そうに震える身体が愛おしい。

「とりあえずシャワー浴びてこい。
話はそれからだ」

腕の中で黙ったまま、彼女が頷いた。

彼女がシャワーを浴びている間に、大急ぎで部屋の中を探した。

「よかった、あった」

恋人がいたのなんてもうかなり前、あれから恋をしていないのはなんでだっけ?