「おい、おいって」

「んんーっ」

揺すってみたけれど、彼女は目を覚ます気配がない。

「仕方ない、か」

俺は彼女を家に連れて帰った。

ベッドに転がしコートを脱がせると、彼女が目を開けた。

「気づいたか?
今日は泊めてやるから……」

一瞬、なにが起きたのかわからなかった。

――彼女の方からいきなり、キスしてきたから。

唇が離れてしばし、見つめあう。
彼女の唇が小さく動いた。

――抱いて。

微かに耳に届いた、たった三文字が理解できない。
なんで彼女が、会ったばかりの俺に。

「いや、俺はソファーで寝るし、別にお前に手を出す気とかねーし」