余裕なく重なる唇。
まるで私の存在を確かめるかのように、くまなく蹂躙された。
チン、と目的階に到着し、扉が開く。
けれど唇は離れない。
誰も乗り降りしないまま、扉が閉まっていく。
狭い密室に籠もるのは、滝島さんと私の熱だけ。

「……はぁっ」

唇が離れ、一瞬だけ見つめあう。
次の瞬間には破壊も辞さない勢いで滝島さんが開くのボタンを押し、半ば引きずられるようにエレベーターを降りた。
部屋に入り、乱暴にベッドに転がされる。

「わるい。
優しくできない」

もどかしそうにコートとジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイをシュルリと抜く。
そのまま――。


「はっ、……あっ、滝島さん……!」

「そうじゃない」

「え?」

彼がなにを言いたいのかわからずに、訊き返してしまう。