「俺が?」

人気のない路地で壁ドンされた。
私を見下ろす冷たい目に、背中がぶるりと震える。

「た、滝島さんが、私の話、聞いてくれないから……」

震える唇でどうにか言葉を絞り出す。
目なんかあわせられなくて俯いていたのに、あごにかかった手が無理矢理上を向かせた。

「勘違いするなよ」

「……え?」

薄暗闇の中、街灯の反射するレンズだけが光って見える。
ギリギリと掴まれるあごが、痛い。

「お前は優しくしてくれる人間を好きになったと勘違いしているだけだ。
だから、小泉さんだって」

「違う!」

「違わない」

ぱっと私から手を離し、また腕を掴んで歩いていく。
通りかかったタクシーを拾って私だけを押し込んだ。