「なにやってるんだ、お前は」

黒メタル眼鏡と同じくらい冷ややかな視線を向けられて、一気に酔いが醒めた。

「な、なにって。
小泉さんとちゅー……」

それでも精一杯虚勢を張る。
けれど呆れたようにはぁっ、と短くため息をつかれ、その場に棒立ちになった。

「小泉さん、困ってるじゃないか」

「あ、いや、僕は……、ね」

曖昧に笑ってフォローしてくれる小泉さんがいまは痛い。

「……だって」

「だってじゃない。
帰るぞ」

私のコートとバッグを手に、腕を掴んで滝島さんは強引に歩きだす。
部屋を出るとき、片手であやまる橋川さんが見えた。
きっと、彼が滝島さんを呼んだのだろう。

「イヤッ、離して!
だいたい、滝島さんが!」