気色悪い声で英人が椅子へと崩れ落ちた。
冷たい視線を向け、周囲の声がひそひそ話に変わっていたたまれない。

「もっと、もっと……!」

頬を真っ赤に腫らし、ハアハアと荒い息で英人がさらに私の手に縋ってきた。

「私にそういう趣味はないから!
二度とつきまとわないで!
わかった!?」

「ああん、それはそれでご褒美ー」

まだひとりで興奮している英人を置いて店を出る。
私はいったい、彼のなんの扉を開いてしまったんだろう。

「ううっ……」

携帯を出して速攻でブロックする。
もう二度と、彼とは関わりあいたくない。

家に帰り、少し考えて滝島さんとのトーク画面を開いた。

「まだなんか、怒ってたらどうしよう……」

迷いつつ、お疲れさま、こんにちはとスタンプを送る。