英人の手がそっと私の手に重なり、ぞぞぞぞーっと背筋が逆立つ。

「……なあ。
もう一度、やり直してもらえないか」

ずっと待っていた言葉なのに、聞いた途端にすーっと魂の底から冷えた。
ああ、やっぱり私の中で、この人とは完全に終わっているんだ。

「新しい彼女ができたんじゃなかったの?」

「あんなの、茉理乃に比べたらクズだ。
オレには茉理乃がいないとダメなんだ」

変わったのかと思ったのに、相変わらずの英人に反吐が出る。
私がいないとダメ?
ただの都合のいい女でしかないのに。

「この間、茉理乃に看病されて気づいたんだ。
オレには茉理乃しかいないって」

「私はあなたなんて……」

私の両手を掴み、妙に鼻息荒く英人が迫ってくる。

「なあ。
……お母さん、って呼んでいい?」