スキップしそうな勢いで彼が歩いていく。

「いくぞ?」

少し歩いて着いてこない私を振り返った。

「ああ、うん」

いままでならさっさと先に行って、私を気にしたりしなかった。
やっぱりなんか、気持ち悪い。
なにを企んでいるんだろう。

食事、と言われたけれど、そんな気分にはなれなくて近くのコーヒーショップに入る。
素直にそれに従う英人はいままでの彼からいって想像できない。

「この間はごめんな、迷惑かけて。
……これ」

お礼を言って滑らされてきた封筒を、何事かと見つめた。

「タクシー代とか病院代とか茉理乃に立て替えてもらっただろ。
ありがとう」

さらに英人が、封筒を滑らせる。
あの英人がありがとうなんてまずありえない。
なさ過ぎてますます警戒が高まる。