音を立てないようにそーっとその部屋を出た。
建物を出たものの現在地がわからず、地図アプリを呼びだして最寄り駅までナビしてもらう。
駅に着いたらちょうど始発が動きはじめたところだった。

電車に乗って改めて携帯を確認する。
隣で寝ていた男は昨日、強引に連れていってもらった合コンにいた。
ちょっとあって悪い酔いしてしまって記憶が曖昧だが、状況からいって彼にお持ち帰りされたのは間違いない。

「たぶんこれだよね」

連絡先の中から覚えのない名前を見つけてブロックした。
いくら酔っていたからといってこの失敗は、ない。
きっともう二度と会うこともないだろうし、このことは記憶から消去しようと思ったんだけど……。



――お前みたいなデブ、誰が好きになるかよっ!

「……!」

彼の、私を罵倒する声で目が覚めた。

「……夢、か」

二度寝に入る間もなく、チロリン、チロリンと携帯がアラームを鳴らす。