「――円です」

「これで。
おつりはいいのでコーヒーでも買ってください。
先ほどのお礼です。
ありがとうございました」

私の財布からお札を出し、運転手に渡して下りた。
受付を済ませると当然、隔離された。
きっとインフルだとは思うが、いまうつされると困る。
一度かかっても型が違うとまたかかるというし。

結局、検査の結果、見事に陽性。
しかしながら私がかかったのと同じA型で、少しだけ安心した。

「とにかく薬飲んでおとなしく寝てて」

英人の部屋に連れて帰り、ベッドに寝かせる。
彼はずっと、訊ねられたこと以外、口を開かない。
きっとそれだけ、つらいんだと思うけど。

足りないものを一度、買いに出ようとしたら英人から呼び止められた。

「……か、帰るのか」

傍にいて看病しろとか命令されるのはまっぴらごめん、だが。