「玄関、だから……!」

口ではそう言いながらも上がっていく体温を抑えられない。
路さんは帰ったばかり、鍵だってまだかけられていない。
忘れ物をしたといまにもここを開けられてもおかしくない、のに――。

「誰かが外を通ったら声、聞かれるぞ」

「……!」

唇を噛んで必死に声を殺す。
逃れようと体を捩るが、滝島さんはやめてくれそうにない。
それに、私だって……。

「はぁっ、はぁっ」

ずるずると壁を滑り落ち、その場に崩れ落ちた。
なんでもない顔で滝島さんは部屋の中へ戻っていく。
下着を穿き直してそのあとを追った。
キッチンで自分のもので汚した手を洗う彼を立ったままぼーっと見る。

「茉理乃」

振り返った滝島さんが、眼鏡の下で目尻を下げ、うっとりと笑う。

「おいで」