「大丈夫、簡単だから」

もう一度髪をほどき、今度は路さんの手ほどきを受けながら自分でやってみる。

「ほら、できたでしょ?」

「凄い、すごーい!」

化粧と髪型、さらに服が相まって、いつもよりも何倍もできる女に見えた。

「おおっ、見違えたなー」

滝島さんも腕を組んで感心している。

「これならプレゼンも絶対上手くいくし、彼氏だって土下座してより戻してくれって頼んでくるぞ」

「そ、そうですかね……」

彼氏なんて滝島さんの口から出て、ツキッと鋭く痛んだ胸の奥は気づかないふり。

「ああ、絶対だ」

目尻を下げて彼がにっこりと笑う。
そのためにいままで、滝島さんの手ほどきを受けてきた。
なのにいま、笑う彼に傷ついている自分がわからない……。