洗面所を借りて、買ってきたスーツに着替える。
出てきたらテーブルの前に座らせられた。

「じゃあいまから、茉理乃ちゃんがより美人に見えるメイクを伝授しまーす!」

なぜか滝島さんがパチパチと拍手し、買ってきた化粧品と路さん手持ちの化粧道具が並べられた。

「こういう言い方をしたらあれだけど、茉理乃ちゃんってお化粧、ヘタね」

「……うっ」

わかっていた、そんなこと。
でもどうしていいのかわからないし、誰かに訊くこともできなくて。
ネットで調べたものの、失敗しておかしかったら? と思うと怖くてできなかった。

「おねぇさんがちゃんとやり方を教えてあげるから大丈夫。
ね?」

路さんが鏡越しににっこりと笑う。

「……はい」

きっとこんな機会でもなければ、怖くてちゃんとメイクなんてできなかった。