にこっと笑った橋川さんの左手薬指には、その笑顔と同じくらい眩しい指環が光っている。

「サガの丹沢(たんざわ)でーす」

赤いマニキュアに口紅がよく似合う丹沢さんは、まるでモデルみたい。

「三阪屋の小泉(こいずみ)です」

まるでハンプティダンプティみたいな小泉さんは、にこにこ笑顔で人がよさそうだ。

「ミツミの滝島(たきしま)です」

素知らぬ顔で名刺を出してきた男から、こちらも何事もなかったかのように名刺を受け取る。
しかし、長身眼鏡で少しつり上がった目がその自信を表すような彼は、金曜の合コンでは一番人気だったはず。
なのになんで、私なんかと……?

「名刺交換も済んだことですし、そろそろ出発しましょう」

ミツミさんの号令でぞろぞろとコースに沿って歩きだす。
今日の会はミツミさんの正月明けのツイートに端を発する。

【みなさーん。
お正月にお餅、食べ過ぎてないですか?】

そこから一気に一般人からも中の人からもリプが付いていく。
その流れに乗り遅れたくなくて、大石課長をせっついて嫌な顔されたけど。